2018年8月4日土曜日

なにやら四方山話(47)

~第33回・戦争責任を考える千葉の集い~
五味洋治・東京新聞論説委員の講演を聞いてきました
熱弁をふるう五味氏
会場からの質疑は時間切れになるほど熱心でした

去る8月1日に「戦争責任を考える千葉8月の会」主催による「第33回戦争責任を考える千葉の集い」が千葉市文化センターで開催。東京新聞論説委員の五味洋治さんを講師に「朝鮮戦争の終結が意味するもの」というテーマで講演会があり、私も聞きに行きました。同会は、もう30年以上も真摯な活動を続けています。

さて、五味さんは、かつて故金正男氏の単独インタビューを成功させて話題になった記者です。五味さんの話は、学者にありがちな「自分だけが分かっている」のではなく、記者らしく基本的なことをとても分かりやすく語る人で、好感が持てました。

朝鮮戦争の経緯については、あらためて述べる必要はないかもしれせんが、1943年カイロ宣言~1945年ヤルタ会談で米英中ソ四ヶ国による朝鮮の信託統治。米ソ合意による北緯38度線分割占領に。ポツダム宣言後、1948年に大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国が建国。

そして、1950年6月、中ソの支援を背景に、北朝鮮軍が南進したことが契機に双方の攻防が繰り返され、1953年7月の板門店で休戦協定調印。現在も「戦争中」ですが、民間人も含めて500万人以上が死亡し、離散家族は1000万人といわれています。

まず、「なぜ朝鮮戦争が起きたか」について、五味氏は、カイロ宣言による「南北分轄統治」に対して北朝鮮が統一を目指したことがことに起因するとしています。背景には対米を意識した毛沢東・スターリンの意図があったということでしょう。

また、「何を残したのか」について、韓国→準戦時体制、軍事独裁、戒厳令、左右対立。北朝鮮→国内では戦争勝利と教育、金一族に権力集中。米国→軍備増強、反共主義、ベトナム戦争へ。中国→経済的混乱、大躍進政策と文化大革命の失敗。

そして日本は、朝鮮特需がありつつも、1950年にレッドパージ、陸上自衛隊の前身「警察予備隊」が作られ、戦争の補給基地に。そういう意味では日本も間接的加害者であるといいます。

さらに「朝鮮戦争が終わらない理由」について、①朝鮮国連軍の存在②有事のさい日本国内7つの基地から航空機や兵士が朝鮮半島を目指す③国連軍の存在は中国に有利。をあげています。

しかし、ここにきての「北朝鮮が対話を始めた動機、意図」について、①アメリカからの攻撃を恐れた②今後の経済制裁を懸念した③米中が協力して金正恩を放逐する計画を知った④トランプの交渉スタイルに希望を持った⑤金正恩の留学経験が影響。⑥分在寅政権の誕生。などを挙げています。

そして、最大の焦点である「終戦宣言とはなにか」について、①休戦協定を平和協定に置き換える前の政治宣言②板門店宣言では「年内に終戦」を検討③トランプ大統領も意欲。ただし米国は難色を示しているので今後の最大の焦点に。

また、「朝鮮戦争が終わると何が起こるか」について、①在韓米軍が不要に。大幅縮小②北朝鮮が経済発展に力を入れる③南北統一が現実味④韓国で兵役がなくなる⑤軍事境界線の開発が進む、など。しかし、一方で沖縄、在韓米軍の重要性が高まる可能性と自衛隊の関わりが強まり、憲法改悪が加速される可能性も指摘。

最後に「日朝関係はどうなるか」について、①「今は対話ではなく圧力だ」とする安倍政権は蚊帳の外②韓国、中国の支援も得られない③米国と日本の対北朝鮮政策は一致していない。

ただ「結局、直接対話しかない」という結論には、やや物足りなさがあり、もう少し話をふくらませてほしかった感がありました。また、非核化へのプロセスや、日本の責任と任務、金ファミリーの非人道的独裁政治をどう総括させるべきかという点なども聞きたかったところですが言及はありませんでした。でも大変勉強になりました。

まずは五味氏の講演の要旨を報告するにとどめます。

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